不安を口癖にするエンジニアには女神は微笑まない


見積もりレビューにしてもプロジェクト計画レビューにしても、兎角、「不安だ」と口癖のようにマイナスの言葉をばら撒くエンジニアが意外と居たりするものです。
確かに見積もり時点は、何をやるのか、顧客の頭の中から少しずつイメージを作り上げながら手探りで進めなくてはならないから、“不安”だという気持ちも理解できます。同じようにプロジェクト計画は、契約でdeliverableが具体的に約束されるので見積時より大分マシだと思うのですが、それでもこれからプロジェクトをキャリーするプロジェクトマネージャは顧客と二人三脚で歩調を合わせながら、ゴールを意識してより具体的なことに悩まざる得ないというこも理解できます。

「理解できるよ」、つまり、「キミの気持ちはわかるよ」と言えるのは、実務でプロジェクトマネージャを経験しているからであって、実際、それなりに天国も地獄も見てきたからです。
#おもに地獄に近いところにいたかも。


何が“不安”なのか
“不安”という言葉、レビューでもミーティングでも、聴いて良い気分がするものではありません。できれば、マイナスのイメージを連想する言葉は聴きたくありません。でもそれは、不安と言う言葉に隠されたリスクに目を向けず、遣り過ごすというわけではありません。
どっち?と聴かれたら、それは、「事実で表現しようよ」派です。ワタシの、アナタの感情は要りません。先ずは“事実”だけで物事を認知したい。感情はそのずっと後で十分です。まだ実体がなければ、予測でも良いです。事実、予測。超えられない壁があって、感情の順です。

プロジェクトを予測する見積もり、実行計画を作るプロジェクト計画はどちらも不確かな未来を仮想しなければならないので、そもそもあたるわけがないものです。それでも、顧客のやりたいことを実現するために

“仮説”やソリューションなどの“テンプレート”を置いて、その脚本の上でどれだけ、プロジェクトチームと顧客を踊らせられるか


という話の筋を書ききらなければなりません。フルスクラッチのアプリケーション開発だとしても、とてもコンセプトとも呼べないかもしれない企画から“何らかの型を作り上げて”その型を話のベースラインとして役割を振り分けます。

見積もりにフォーカスすると、そこで見積もりをするエンジニアが“不安”だと言うなら、2つのことについてぼんやりと何かに気付いているのではないか、と推測できます。

一つ目は、“顧客と一緒に踊る舞台の仮説やテンプレートを理解しきれていない”と言うことです。自分たちがこれから顧客と合意形成していく契約の根本である、フレームが自分の腹に落ちず、何かひっかかっていることがあるのではないか、です。

そして二つ目は、“顧客の要求の本質が掴みきれていない”ということです。自分たちがキャリーする仮説やテンプレートがあるにしても、そこに乗せる顧客の要求のキーファクターを抑えられていないため、仮説やテンプレートの重要なキーが定まらず、見積もりがグラグラしていると感じているのではないか、です。


不安を解消するには
“不安を口癖にするエンジニアは、感性は良いのです。不安と感じる要素を感覚的に感じられるのですから。ただ、一つの課題は、その感じた要素をそのままにしていることです。

今、そのエンジニアがしなければならないことは、

“不安に感じたことが具体的に何か”


を明らかにすることしかありません。それが最優先課題です。

「不安だ?オーケー。それが何だか教えてくれ。教えてくれたら一緒に考えよう。」


何もしなければ女神は微笑まない
不安だと感じるなら、それが何かを突き詰めなければ不安は解決しないのです。勉強で分からないことが何か、が言えなければ分からないことは分からないままです。

ただ勉強と仕事と違うところは、勉強には答えが用意されているけれど、仕事には答えがないところです。ならば、どのようなこ答えを導き出しても、0点ではないのです。例え、0点を出してみても途中途中でステークホルダの関与が入るので正解にバイアスが掛かるものです。そこは心配するところではありません。

今、やらなければならないことは、不安が何であるかを体裁を気にせず突き詰めることです。良く出てくる“なぜ”を不安に対して繰り返し、唱えるしかありませんし、それが一番効果的です。

不安のまま、何もしなければその不安と心中するほかありません。不安だと分かっているならその不安を少しでも突き詰めて、具体的に何なのかを引っ張り出すのです。少しでも姿、形が具体的になれば次のアクションが見えてくるものです。

女神は、何もしないエンジニアには微笑まない。もがき、前に進もうとするエンジニアだけに女神は成功を抱きしめ、微笑むのです。