タスクの作業時間を“理想時間”で見積もることはdeliverableの高速化とメンバの意思疎通を増す


これからここで述べることは、「自分のシステム開発ウォーターフォールだから関係ないや。」とか短絡的に思わずにちょっとだけ読んでみて欲しいと思うんだ。ホントは、自分の組織のシステム開発は、ウォーターフォールしか“知らない”エンジニアや自分で“勉強して知ろうとしない”エンジニアに読んでほしいのだけれど。


某プロジェクトチームにカンバンを取り入れたとき、メンバはカンバンを知っている人はわずかで、tracにしても数名だった。彼/彼女らは、WBSの名前は知っているし使ったことはあるけれど、タスクをなぜWBSで管理したいのかという目的を知っている人はいないんじゃないか、と思わざる得ないスキルレベルだった。


ワタシはいろいろと思案し、全体のシステム開発手法はプロジェクト全体での管理がウォーターフォールだからそれに合わせるとしても、担当プロジェクトのシステム開発手法としては、ウォーターフォールスクラムとカンバンのいいとこどりをして、メンバの苦労が少ない、これなら幸せだろうと思うやり方でやることにしたんだ。


ワタシがjoinしたときにSEリーダが作っていたexcelWBSは捨てた。最初に始めたことはホワイトボードにtodoとdoingのタスクを書き込むタスクの視覚化だ。次に始めたのはtracを使ったTiDDによるチケットを発行しないとタスクに着手させないタスクコントロールに手を付けた。


ホワイトボードにタスクを書くことでメンバひとり一人が何をやっているか、逆に誰に余裕があるかを実感させたんだ。そのホワイトボードの書き方はときどき変わっていった。今は、結局、カンバンに落ち着いた。それなら「初めからカンバンでやればいいじゃないか。」と思うかもしれないけれど、彼らには王道のウォーターフォールさえ、たぶん、きちんと、教育をされていないだろうと思えるし、これまでの経験の中で体系的にウォーターフォールシステム開発に携わってきていないだろうと思われるほど、整然とタスクをexitさせていくことはできていなかったんだ。


メンバには、自分たちのタスクのコントロールをどうやっていくかメンバ自身の頭と体を使って作り上げていくことを学ぶ必要があった、と思った。


だから、今、何が進行しているのか、次は何をするのだろうか、とメンバを取り巻く環境を共有することから手を付けたんだ。それになれるか慣れないかのタイミングでTiDDで作業をデジタルで残し、タスクの成果をナレッジにできるように下準備をはじめたんだ。


TiDDtracを取り入れたのは、もう一つ狙いがあって、実はこっちの方がメインの狙いだけれど、それは、タスクを小さくすることだった。メンバはウォーターフォールでありがちな、タスクの開始と終了の期間をどんぶりのように長く引っ張る癖がついていた。それでいて、期日までに終わらないんだ。それでは、プロジェクトは、どんな開発手法を取り入れても変わらない。


タスクを小さくすることは、着手からexitまでタスクを分解するということだ。タスクを長い期間でやってはいけないということではない。長いタスクをやるということは、その長いタスクの中で段取りを決めて、自分で期間内で終わるようにコントロールできるということがないと任せられない。しかし、彼らはどんぶりの期間のタスクを終わらせることはほとんどできていなかった。


なら、「WBSを小さくしてウォーターフォールでやればいいじゃん?」て思うかもしれないけれど、考え方を変えてもらわないと単位が大きいか小さいかだけで結果が伴わないと思ったんだ。


だから、考え方を変えてもらおうと思って、やり方を、タスクのアプローチ自体を変えてしまうことで今までのやり方は通用しないことを肌で実感してもらうために、すべてを置き換えていったんだ。


作業期間は“理想日”で。最初は日単位だったけれど次第に時間単位に変えていった。


メンバは、理想時間に移行することで、理想時間にコミット、exitを約束するためには、そのタスクがdeliverableで何をどのレベルで求めているのか、exitしていい目標の“点数”は何点をクリアすればいいのか、タスクの中の段取りは誰とのレビューを突破すればいいのか、そうした

“当たり前のことを着手する前に確認してから作業を始める”


ということを合意しないと見積もれないことを知ったんだ。


理想時間では「息もする間もない。」と思うかもしれないけれど、そうじゃないんだよ。逆なんだ。メンバ同士が空いている時間を知ることができる。これは、自分が理想時間で終えるために考えた段取りの中で、ほかのメンバとミーティングをしないとすすめられないとか、相談をするときに、誰がどのくらい1日の中で“相談できる時間を持っているか”という余裕を視覚化できるということなんだ。


なんとなく、タスクの開始日、終了日を長く引いて、思い付きでミーティグを入れられて思考を絶たれるより、理想時間で担当しているタスクを知ることでミーティングとか相談ができる時間を見つけらる方がその前より意思疎通が何倍もよくなったんだ。実際、ふりかえりをするとメンバはいうよ。「前と違う。」って。



「会話が多くなったよ。これはいいって。」