XP、モブプロを導入したいリーダが上層部を説得するための教育心理学

人は自分なりの考え方、知識を持っているものです。子どもの頃に家庭の中でして良いこと、してはいけないこと、どちらかと言えばしてはいけないことばかりを教え込まれている(家庭により褒めるおうちもあるけれど)ので、そうした家庭の中での位置を確保するためにどうすればいいかを考え、存在を認められるための知識が積み上げていきます。こうした経験は後進的な性格の核となり、その人の行動を強く制限することになります。

その後進学とともに社会が広がり、初めて経験することは過去に積み上げてきた似たような経験を引っ張り出して繰り返し自分で経験から共通項を整理し、新たな経験に対処できるようになっていきます。それが良くも悪くも様々なことを知っている状態を増やしていくのですが、知っていることをわかっている、つまり仕組みを理解しているかどうかと言えば、多くのことについて知っているだけでわかっている状態にはなっていないのです。例えばウォーターフォールを説明してください、と問いかけたとき、説明できるエンジニアはそう多くはないのです。

知っていることとわかっていることは大きな差があります。

こうしたこと、つまり、知っていることが実はわかってないことであることは、その人が知っていることに対してどう知っているかの説明はいくらでも進んでしてくれるのですが、知らないことを進んで教えてくれることは少ないのです。

自分が何を知っているかを知ろうとしたり、どのように知識を得ているかを知ることは学習方法の習得の観点で大事なポイントですが、それを形式化したりすることは実は難しいということに由来しているためです。

「自分が何を知っているか」の自分を1人ではなく、「仲間で」に置き換えると状況は変わってきます。仲間で同じ課題を解決するためには、その課題を解決方法について自分の知っていることなのか、わかっていることなのかを伝えようとするようになります。こうした行為を相互に問題という触媒を介して理解をしようとすることで実は自分の知っていること、わかっていることに自分自身が触れるという1人では難しい経験を得ることができるのです。

 

さて、これは新人教育での指導役のエンジニアとのペアでの作業や、メンター、最近だとモブプログラミングが一部で取り上げられているのですが、こうした1人でやるより仲間同士でやる方が生産性が高いとかスキルの育成が早いとかの裏側にあるものなのではないかと思うのです。

ある意味、理論的な裏付け、というか。こうしたことも経験的に知っているよりはわかっている状態で手法を取り入れると効果測定がとてもしやすく、組織的な展開をする際の上層部を説得して同意を得るには効果的だと思うのですよ。

 

 

教育心理学概論 (放送大学教材)

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