フラットな組織は現状を打破する銀の弾なのか
「フラットな組織」なんて甘美な響きを持っているのでしょう。そう感じるから、部課長制をとっている組織の末端のシステムエンジニアは、スピンアウトしたりスタートアップでフラットな組織を実現しようとするのですよね。そして、それを実現できないシステムエンジニアは嘆く、と。
そういうワタシも「フラットな組織」がコミュニケーションコストと情報の鮮度(減衰されない)という観点で良いと思っている派なので「どんどん推進しましょう!」なんですが、でも、「フラットな組織」を目指すならそれなりの「副作用(覚悟)」が必要ですよ、と経験的に思っています。
フラットな組織に期待すること。
それは、意思決定のスピード、多段階の管理手続きのスキップでしょう。意思決定のスピードは、やりたいことを直接権限を持っている人に提案して、その採否を即答してほしい、でしょう。いくつもの管理レベルを通過するだけで時間がかかったり、採否のプロセスのどこでどう検討されているかまで知りたいんですよね。これはプロセスの可視化ですね。
「なんで『だめ』だったのか」それを教えて欲しくても、多段階の管理レベルを行ったり来たりするだけで本当に知りたかったことはオブラートに包まれたり、うやむやになったりしてその結末だけ連絡がくるだけ、とかもうストレルフルですよね。
多段階の管理手続きのスキップは、組織の活動を担うシステムエンジニアが何かしたいと思うと、それぞれに手続きが決まっていて、それも場合によっては各管理レベルのスタンプラリーが必要だったりと、やりたことを通すための準備というかお作法が「面倒臭い」ただそれだけなんですよね。まぁ、手続きの責任を負う側の中の人としたら、そうした続きにも「意味」があるかもしれませんが、手続きをする側としたらその手続きをしないと進められないから面倒臭いと。
じゃあ、ですね。フラットな組織を実現するためには何が必要なんでしょうね。プロフェッショナルなシステムエンジニアを選りすぐりで集め、プロフェッショナルなシステムエンジニアの集団には多段階の管理レベルを持つ組織でやっているようなことはさせるな、なんでしょうか。
なんか、違うんですよね。だって、必要な事務手続き、個々のシステムエンジニアに紐づくものは、個々のシステムエンジニアがやらないと始まらないわけで。じゃあ、先に出てきた意思決定のスピードの点はどうでしょう。
多段階から直接意思決定の権限を持つ責任者と交渉できるということは、提案する側の方に高いスキルレベルと交渉力が要求されると思うんですが。だって、提案する側に提案することに対するビジネスとしての価値を判断できるスキルが必要になるじゃないですか。だって、お仕事ですもん。
さらに、最終決定権限を持っている相手に投資などの判断をしようと思ってもわないといけないわけで。なんでフラットな組織になったらそんな面倒なことをやらないといけないのか。そりゃ、それまでいた多段階の管理レベルがやっていたことを誰かが引き受けないと。そんだけの話です。
もうひとつの「多段階の管理手続き」ですが、シンプルな階層になっただけ途中の管理レベルのチェックがなくなるので、その分いい加減に手続きはできなくなるんですね。申請なり報告するなりする側にそうした精度が求められる。だって、多段階の中間管理レベルの人たちがいないんですから。
フラットな組織。
だから、1つ目の意思決定のスピードで要求されるシステムエンジニアがそうした要求への対応もできるプロフェッショナルなシステムエンジニアとしてのスキルを要求されるんです。逆に言えば、スキルレベルが中間層や手間のかかるシステムエンジニアは、フラットな組織でも何も変わらない、というか、逆に未熟さが目立っていられない状況になりますね。
そして、2つ目の多段階の管理手続きは階層構造がシンプルになる分、プロフェッショナルなシステムエンジニアが自身でやるか、フラットな組織の数少ない管理者がやるか、それ専門の事務担当者を置くか、は別として求める精度でやらないといけない。暗黙の品質要求レベルが上がるんですね。だって、救ってくれる人がいなくなるんですから。
ただ、こうしたことも含め、失うもの、得るもの、なくせるもの、負わなければいけないものを評価して決めないとこんなはずじゃないかった、なんてなりかねないので腹はくくっておきましょう。