見積に根拠は必要だし、根拠がないと後で首が閉まるのはシステムエンジニア自身だし


またまたネタ的な記事だなぁと1日放置。アレですよアレ、この記事ですよ。

「詳細な見積もり根拠を示せ」と言う。一見、当然の要求のように思えるが、実は多くの場合、IT部門がこんな要求を出すことは「我々は無能で無用の存在です」と言っているに等しい。

引用 詳細な見積もり根拠を示せ」と要求するIT部門の無能と無用 


契約形態から言えば、請負なら言っちゃダメですね。例えば100万の見積を1人でやろうが、10人でやろうが発注者側は口を挟めないので。準委任契約なら、IT部門から委託される業務を遂行できる人を出して、依頼されたアウトプット(成果物ではないよ)を出せばいいので提供する工数を提示するのが一般的だと思います。


じゃあ、なんでIT部門が「詳細な見積もり根拠を示せ」なんていうケースがあるんだろう、と考えてみます。


IT部門もご多分に漏れず、担当する部長とか役員がいて、それぞれで執行できる予算上限があったります。部長なら300万までなら裁量で決済していいよ、というやつ。ITベンダに見積もりを取るような仕事は担当がしているでしょうからそんな権限はなくて、決済を取るために資料を集めて、決済が通るような投資対効果とか費用回収のプランとかそれっぽく仕立てるわけです。


そのとき、ITベンダから取った見積が適正価格であると言いたいわけです。IT部門の担当としては。その説明資料としてのコストがひと山幾らだったらそのまま出せるか、って話です。


ITベンダから取った見積対象に対して、何等か根拠のある見積もりを自分で作れれば、見積仕様の作業項目の抜け漏れとか総額の規模感からの確からしさを類推できるわけです。


でも、見積でき無かったらどうするか。


複数のITベンダに相見積をだして、同じ条件で比較して、相場を確認しつつ、相見積を出している以上、選定基準に従って採用を決めるか、正直に見積を出したITベンダに聞くほかないでしょう。別にそれがいいかどうかは、契約に依りますけどね。


そのあたりを提案のときに聞き取りして、提案仕様自体を稟議の別紙で使えるように作るITベンダだってあるでしょうし、契約に応じてあしらうITベンダだってあるでしょう。今時なら、「コンプラ的にそういうの回答できないんですよ〜」って。


あと、IT部門が既存のITベンダのサービスに不満を持っているから相見積を取って既存のITベンダにお灸をすえたいとか、buyしたいITベンダの提案があるんだけど予算的に嵌らないので価格を下げたくて、相見積を取って「コンペは同じ内容で価格が安いけど」とやるIT部門もあるかもしれません。


まぁ、それぞれ大人の事情があるということです。

「しかも、その要求に応えてITベンダーがその根拠を示したところで、見積もり自体は“嘘八百”なのである。」
引用 同上


この物言いはどうよ、と思う。だって、

「私はこれまで「ユーザー企業はITベンダーに提案料を支払うべきだ」と主張してきた」
引用 同上


て言うなら、「嘘八百にお金払え」ということでしょう。都合のいいところだけ繋いでいるけど。


確かに、大型案件とか入札案件とかは提案にコストが相応に掛かりますよね。営業もシステムエンジニアも何人もかかわることになるし。


でも、そこまでコストを掛けてなんで提案するのよ、という面での切り口は言及していないですよねぇ。じゃあ、なんで要件定義ぽい資料まで作って提案活動をするのか。


すぐに出てくるのは、その案件を取りたいから。他には。なんで提案書に要件定義の走りのようなところまで書くのか。新システムの概念図とかネットワーク構成とか機能概要とか非機能とか。


これ、提案仕様を書くことは契約で遂行を約束する責任の範囲を明示するという正面からの理由があるほかに、提案するITベンダが自身の提案に具体性を持たせて、それこそ、技術仕様と範囲を決めて内部コストの見積根拠とするため、なんだと思うんです。


つまり、技術仕様と範囲を明示することで、どうなっちゃうかわからなくならないように不確定要素を低減しているのだ、と。そう思うんです。


だいたい、嘘八百なんて資料を眺めれば不整合なぼろがあって見つかるもんですし。嘘をつき続けるより、程度はあるにしても、根拠の積み上げをマシマシして出した方が楽ですよ。嘘がない分。