「うちもそろそろクラウドに」で失敗するパターンとは
ここ数年でエンタープライズ市場においてクラウドサービスが浸透してきた感があるのは、大手ユーザがクラウドを使っていると事例を出すようになってきたからですね。本の数年前まではクラウドなんかに「自社の重要情報を置けるか」って雰囲気でしたから。
まあ、そういうこというところは「重要情報ってどれ」と聞くと「これ」と指せませんが。
そんな状態でも、大手ユーザの事例で華々しくセミナー等でプレゼンするものだから
「そろそろうちもクラウドを」
なんていい出すわけです。大丈夫なんですかね、そんな動機で。
鶴の一声や声の大きい役員の一言で現場は大騒ぎするのですがなぜでしょう。
全体を把握しているアーキテクトがいない
例えばPaaSを使うとして、オンプレの基盤を置き換えるとした場合、今あるシステム環境を何も考えずに置き換えるなんてことはしないです。NWなどの通信をどうするのかとか、乗せるアプリケーションはPaaSに載せて大丈夫(何もせずに動く)なんだっけとかやることはたくさんあるものです。
オンプレのシステムで全体を把握していることなんて企業規模が大きくなればなるほど専門分野で分掌していくので誰も押さえていなくなります。企業規模が小さければ人的リソースが元々いないのであれもこれも一人や二人でであとはベンダとでやっているのでほぼわかっているでしょうけれど。ただ「技術は知らん」という担当もいるので一括りには出来ませんが。
で、(上から落ちてきているので)オンプレからクラウドに持っていくために新規に人を入れられれば幸せな方で、既存のメンバで調べながら整理をすると簡単に持っていけなかったりするわけです。何かしら作業で結局、足が出る。
これを産みの苦しみとしてイニシャルコストとして予測した上で進捗させられるかどうか。
目的がコストならオンプレが勝つ(ときもある)
クラウドに持っていくとサービスに対する対価を支払うのでやめるまで月額課金されます。勘定科目は経費になると思いますが。
普通、投資をする際には費用対効果を比較するものです。オンプレなら色々とベンダと協議する余地もあったわけですが、サービスを買うことになるのでそうした調整はききません。
その意味ではサービスを使うことであれこれとしがらみを捨てるきっかけになるという見方はありますけれど。
先の鶴の一声で始まったりすると「なぜクラウド」がないものだから、積み上げて移行まで積んでみたら割といい値段でびっくりしますね。
開発プロセスが対応できていないなら…
とかあるわけです。「なぜクラウド」がなくて、世間の早いリリースとかを間違って持ってくると
「いやいや、そんなのできない」
と。そりゃそうでしょう。何せ、クラウドという道具を考慮した開発プロセスになっていないんですから。今と同じやり方でリリースを早くするなんて精神論以外のものではないです。気合じゃリリースできない。それをやったら、大障害起こしますよ。
システム開発手法は、道具を上手に使うことも考慮しないとその道具を使うことで期待する効果が得られませんから。
分析してからでも遅くはない
例えば、テストのエビデンスを画面キャプチャをしているようなシステム開発のプロセスなら「それ、クラウドでやるの」って感じです。どこが早いリリースを支える開発プロセスになっているのか、と。
コストが目的なら、本来はこっちをキャプチャの代わりで担保するプロセスを考えた方がオンプレのままコスト削減できますよね。