中堅エンジニアがやってしまう若手エンジニア育成でのアンチパターン

若手エンジニアが配属されると中堅エンジニアに育成を任せることが多い。中堅エンジニアに育成の自覚を持たせたいというよりは、もう習慣的な反応になっている。若手エンジニアをいきなり現場に入れて相談相手でありメンター役になるエンジニアも決めずにプロジェクトに丸投げするよりはいいのかもしれない。

ところで、そのメンター役になるエンジニアは

『育成に関する知識を持っているのだろうか』

という根本的な疑問を持っている。学卒で教員免許を持っているエンジニアは教育に関する基礎知識を持っているだろう。では、それ以外のエンジニアはどうだろうか。

何を背景に若手エンジニアを育成できると思って育成役をアサイメントするのだろうか。多分、ほとんどのマネージャはそこまで考えていない。リーダ役を担える中堅エンジニアに育っているのだから、若手エンジニアを『中堅エンジニアと同じように』育てられると思っているのではないか。

何も教育に関する知識のない中堅エンジニアがやってしまいがちなパターンをいくつか挙げてみる。

  • 中堅エンジニアの今の技術レベルで出せる結果を要求する
    例えば、28歳の中堅エンジニアが23歳の若手エンジニアを育成すると5年の経験差がある。38歳の中堅エンジニアだと15歳の差になる。中堅エンジニアは今の自分の技術レベルでの成果と同等の結果を期待する。
    その結果何が起きるか。中堅エンジニアと同等の期待結果を繰り返し得られないから『あいつは使えない』と言い始める。

  • 中堅エンジニアの思いだけで育成する
    中堅エンジニアのミッションは若手エンジニアが1年後に成長してチームに貢献できる技術を持っていることである。貢献するのは若手エンジニアの成長の結果であるのだから、主役は若手エンジニアである。
    人は押し付けでは自ら学習したり関心を示して情報収集したりしない。指示されるので結果的に受け身であることを訓練されてしまう。
    育成は若手エンジニアと中堅エンジニアと会話し、1年後の若手エンジニアの活躍している姿をイメージアップして二人で設定しなければ上手くいかない。

  • 中堅エンジニアから一方通行で教える
    若手エンジニアの育成を中堅エンジニアが行うということでイメージしてしまうのは、中堅エンジニアから若手エンジニアへ一方通行で『教える』という図式を暗黙に持ってしまうことだ。
    教えられるのは若手エンジニアより中堅エンジニアであることが多い。それは中堅エンジニア自身もその先輩のエンジニアから経験知で教えられているため、教えることがどのような経験を得られるかを断片的にしか持ち合わせていないからだ。
    中堅エンジニアは若手エンジニアに教える経験を得ることで、教え方や期待する結果を得られたり得られなかったりしたときの対処方法を学ぶ機会になる。育成は教える相手とのインタラクティブで進行する相互の育成の場なのである。

 

 

 

 

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