技術的負債とは、マネージャの不作為の転嫁ではないか


マネージャのロールは、人材育成であると1年前のブログの“エグゼクティブが期待する人材育成と現状とそれにどうこたえるかという宿題をどうやって解決するなのはー”で既に言いたい放題言ったのだけれど、

「組織的負債」というものを考えてみる Line 1: Error: Invalid Blog('by Esehara' )


のエントリを読んでいて以前わたしが書き残したエントリのマネージャの不作為と技術的負債を「上手く言い表しているなー」と思ったわけです。ただ、その負債は本来経営側の問題を技術者であるエンジニアがそれをこれ以上待てないと痺れを切らして手を突っ込んでしまっているのではないか、と思い至ったんですよ。


技術的負債という言葉はだれでも使っていいわけではない、のでは?
多分、勝手に想像するに、技術的負債が問題になるのは体力もないスタートアップ間もない組織と呼ぶもの躊躇するような成熟度しかない集団、若しくは、中小企業までが切実な問題として抱えているのではないかと思うんです。それは裏返せば組織としての人的リソースが固定コストを抱えられない制限により、その組織の母数が結果的に限定されているからなのではないか、と思うんです。


端的に言えば、「お金がなくて人を雇えないもん!」が根本にあると。


それはそうですよね。お金がなければ雇える人は限られる。少ない、そのビジネスを維持するために必要な最低限のリソースしか確保しない、又は、足らないというところが現実の話なのではないか、と。少ない人数のエンジニアで遣り繰りしないといけない。だって、そのビジネスを具現化してローンチしないと投入資金を回収できないのだから。いや、尤も、ローンチしても回収できるかどうかは別の話だけれど。


技術的負債って単なる人的リスクでしょ?
それは資金の制約によって必然と人的リソースが制限されるから、ビジネスに必要なスキルは必然とマルチスキルとなるのは至上であるというところはご理解いただけると思うのだけれど、それは、人的リスクからの観点で言えば、代替がない、と言うことになりかねない可能性を持っているということなんです。

資金が限られる→エンジニアは少数→広い技術をマルチでカバー→一人でも抜けたらアウト!


と言う簡単な話です。誰でも、そのロールを担うポジションにつけば考えることだと思っていますが、この技術的負債という言葉が便利に使われている感をぬぐえなく感じるのは、その担うべきロールの人が手を打つことができず、結果、その皺寄せが現場のエンジニアを圧迫し、なし崩し的にエンジニア自ら自衛的に手を出しているのではないか、と思うのです。


ところで、なぜ、大企業は考慮に入れていないかと言えば、エンジニアの母数がそれより小さい規模と比較して桁違いだからです。本当に必要なのなら、組織全体の中から引っ張ってくればいい。それこそトップダウンで決めればいいことです。なにせ、体力があるのですから。


マネージャが不作為であるということ
以前に書いたとおり、


さまざまな制約がある中で、プロジェクトへアサインするのは誰だって同じであるのだから、それを、組織が必要とする人材を意識して育成しないのは不作為に他ならないと思っている。「忙しい、人材育成の目標に合っていない」なんていうのは言い訳でしかない。それ以上以下でもない。忙しいなら何かを削ってでもやらないといけない。それでも育てるマネージャの仕事だし、まなび育つことがエンジニアのミッションなのであるから。


なのだ、との思いは変わらない。ビジネスを動かすマネージャの仕事は、人的リソースを育成することなのであるから。それを、マネージャ自身が「技術的負債だから。」なんて言っているようならそのマネージャを疑わないといけない。そのマネージャは自分の仕事をメンバに付け回しているんだ。


だから、冒頭の引用元のブログの“組織的負債”という表現については的確なのである。あくまでも、表現については、である。


マネージャがしなければならないこと、エンジニアがしなければならないこと
なんで「“表現について”だけなの?」ときかれるなら、それは、一方的に「現場のエンジニアが請け負うものではないから。」だと思っているからです。組織である以上、人が一人で出来ないから集まって役割分担しているのですからね。元々の人的リソースの補充計画はマネージャの仕事なんだからそれを具体的に実現するために必要なすべてのリソースの確保、場の確保、実行させるために方針立てをしなければならないのですよ。


片や、現場のエンジニアはそれを具体的な実行プランに展開して結果を出さなければならないんです。それをやばいからと言って現場だけでやるのはちょっと違うと思う。それでもやらないといけないのだというなら、きっちりとマネージャを巻き込むようにマネージャを詰めることです。マネージャの承諾はもらっておくんです。技術的負債を減らすことの組織へのメリット、しないことでのデメリットを明らかにする。そしてそれを伝え、オーソライズするんです。きちんと、マネージャを巻き込むという事実を作って、その予算の裏付けを確保するんです。


エンジニアが技術的負債を減らすために動くにも予算の裏付けが必要なのは、ワタシたちエンジニアはボランティアで仕事をしているんじゃないからです。それを忘れてはいけない。