パトライトを回してもらうために


大事なものには何かあると困るのでまめに「どーなっているかなー」とかちょくちょく用もないのに覗いてみたりするものです。それが生産設備だったり、ITシステムだったりすると見に行く手間がバカにならないのでその“何か”を決めておいて、その“何か”が起きたときにわかるように監視通知をしますよね。で、よくあるのが赤黄緑のランプのパトライトが設備に繋がっていて“何か”が起きたときにそれを状態の程度によって点滅させたりさせて知らせる、と。


で、監視しても知りたいこととはそれが起きたら不都合なことでそれってトラブルなことが多いです。いいことは知らせたりしない。状態に問題がないならそっとそのまま放置プレイ。


じゃあ、プロジェクトではそうしたパトライトを回すようなことはないのかな?と思うわけです。なんでそんなことを思ったかと言えば、

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これ読んだから。MIRとかベンダ4社とかいろいろ揶揄されているような気がしますが、それは棚に上げて邪推は止めておこうかな。でも、原因はいろいろあるんだろうけれど、結局、真因は単純なこと何だと思います。局面ごとにそれぞれがやり終えないことをやっていなくて、そのやらなかったことを先送りして見逃していたから、なんだと思う。「そんな風にやっていたら当たり前の結果じゃん?他に理由があるんだよ。」と言う人もいるでしょう。


でもね、当たり前だと思うことを当たり前のようにやっていないから今があるんじゃないかな?人の行い、ふるまいは、やったようにしか結果が伴わないんです。寝ている間に妖精が片づけておいてくれることは残念ながらワタシたちエンジニアの世界観には登場しないのです。それをやるロールを担うエンジニア一人一人が成すことを成さないと何も出来上がらないのですよ。


この当たり前なことを当たり前のようにすることが人は思うほどに出来ないのだ、と言うことを知らなければならないと日頃から思っているのです。マネージャとロールにつく人は特に、ね。


それより、同じようなことが「自分のプロジェクトで起きたら嫌だな。」だし、嫌だななんて「言ってられない!」ですよね。体力がある組織なら、管理部門なり、PMOなり、最終的にはマネージャが乗り込んできますよね。「どうなっているんだ?」「さっさと巻き戻せ!」とか言われるんですよ。それではたまらない。


大きな進捗の遅れ、スコープの見直し、コストオーバーラン。どれも行き成り降って湧いてくるものではありません。プロジェクトが始まる前の見積もり時から、プロジェクトの計画、キックオフなどの助走期間から小さなことを気づかなかったり、ボタンを掛け違えたり、将又、放置したりしていたものが積み上がり、気づいたら自分たちではどうしようもないほどにそびえ立っていたり、自分たちで穴埋めできないほどの穴が開いていたり、前進も後退もできないほどに堀を埋められていたり。


日頃から仕事は丁寧にやりなさい
以前お世話になっていたエライ人は局面ごとにそういう言い方をされていました。納期になってから何かしようと思ってもそれでは遅い、と。日頃からやっていないとどうにもならない。それまでしっかりやっていて顧客の信頼を得ていても何か一つでもそうしたつまらない、配慮が届いていない仕事があれば顧客の信頼を無くすんです。「こんなことで?」と思うようなことを実は顧客が大事に思っていた、なんてこともよくある話です。だから、日頃からの仕事に気を配って丁寧にやりなさい、と言っていたのでしょう。


でも、仕事を丁寧にやるということは、決して、契約以上のことをやりないさいと言っているわけではないのです。それをするのも間違い。契約の範囲で約束したものをきちんと届けるためにやりなさい、ということです。


小さな“オカシイ”を見つけさせる
人には得手不得手があるから、同じプロジェクトのメンバでも感性が違うものです。人とは工業製品ではないので感性のぶれる幅が広すぎる。そうしたこともマネージャとつくロールの人は知っていないといけないことです。


であれば、日頃の様々なプロジェクトを危うくさせる事柄をそうした感性の違うメンバに気づいてもらうことは期待できないのでしょうか。それはプロジェクトを統率するプロジェクトマネージャがやらないといけないのでしょうか。


ワタシはそれはメンバ一人ひとり違う感性を持っているから夫々が関心を持ってお互いをカバーするしくみを用立てないと現実問題やりきれないと思うんです。そのために、日頃の仕事をやるためのプロセス設計はもちろん、そのプロセスをもっと楽に、もっと短時間でできるための関心を持たせたり、ふと気づいたことを口に出せるような場の雰囲気を作らないと誰も言わなくなるというか、言えなくなってしまうと思うんです。


そうした場の雰囲気を作るのって、簡単にできるものではないんですね。ふと気づいたことを言ってもおかしな目で見られないとか、間違ったことを言うかもしれない、という言い出しにくくならないように言ってもらうことが。人は、自分が意識しているより自分に対するプライドを持っていますから。自分が弱いことを知っているから、弱みを見せたくないと思っているから、言った後どうなるかわからないことは言いたくないんです。でも、それでは困るんですね。あとあとになって「これどう収束させればいいんだ?」ってなってからでは遅いんです。


だから日々の仕事の小さなタスクの中で“オカシイ”を見つけたら“オカシイ”と言える、パトライトを回させないといけない。それがマネージャがつく人のやらないといけない仕事の一つです。


そうしたしくみは誰かが作ってくれるもんじゃない。