新国立競技場にみるプロジェクトの価値基準を設けないで始めるとプロジェクトが失敗する


世間が、というかいつものようにマスコミが可燃物を探して火をつけて回っているので正直放置していたんですが、これはちょっと読んでみようかな、と。

新国立競技場「やっぱりザハ・ハディドが必要です」元ゼネコン社員から見た混乱の原因


プロジェクトマネジメント、特に今の主流のPMIのPMBOKは業種に依存することなくプラクティスの体系化の形式知ですから、ピラミッドの建設など紀元前から存在する業種の建設業も現実に施工の云々は別にしてどこに問題があったのかは想像がつくものです。


端的に言えば、JSCがQCD(Quality/Cost/Delivery)の優先順位を決めてからモノゴトを進めなかったからでしょう。もう、これだけ書いておけば「正解」で、後は何すればいいかもわかると思うのですが。まぁ、こまごまとしたことの方が多くて厄介なのは一旦失敗プロジェクトの認定を世間からされているからですが。


JSCからみれば外野のワタシが何かを言うのはアレな気がしますが、国立競技場刷新プロジェクト(勝手に名前付けました)のプロジェクトオーナーのJSCは、QCDの何を最優するかその順番をステークホルダから同意を得ておかなければならなかったのでしょうか。


最優先順位に位置づけられるのは、Delivery、つまり納期以外選択肢はあり得ません。オリンピック開催の期日を国立競技場が予算内に作れないから変更するわけにはいきませんから。このプロジェクトは、納期が最優先です。


それでは、2番目の優先順位はQとCのどちららか。オリンピックのメインスタジアムの施設には、設備に関する要求事項があるようです。それは外部組織からの要求事項なので「制約条件」になります。これをクリアできなければ開催は出来ないわけです。


制約条件は成果物に織り込まれることになりますから、成果物が備える機能となります。これは、品質の一部です。


さて、Costは一番最後の3番目なのか、というところです。でも、今世間で炎上しているのは2500億円という建設費です。じゃあ、DeliveryよりCostの方が優先順位が高いのかと言えば、先に述べたように開催日に開催できることが最優先です。なので、Cost<deliveryなのです。


QualityとCostの関係はどうかというと、Quality<Costが正解なのでしょう。ただし、制約条件は実現されなければ施設の要求を満たさなくなりますから、Deliveryが実現できないことになります。これではダメです。


Deliveryが最優先であることは解ってもらえたかと思います。じゃあ、Costはどうすればいいのか、ということです。


ワタシ的には、採択された建設デザインが、制約条件を含めて、かつ、Deliveryを実現できる前提で「いくらかかるのか」という積算をするしかないと思います。そうでなければ、Deliveryが出来ないのですから。なのでそれが実現できるなら必要なコストなのでかかるものは支払え、というスタンスです。


その上で、アドオンしたいJSCなりステークホルダの要件を並べて、いくらかかるかを積算したうえで、どれを機能としても盛り込むか判断するほかないです。収容人数を要求より多くするならそれは追加機能ですし、可動式座席もそうです。それをやると制約条件にプラスでいくらかかるけど「それでもやるの」とやらないといけないし、予算のキャップ、つまり制約を設けるなら最低限かかるコストとは別に追加分の機能についてやらないといけない。


JSCは、こうしたことを整理して、ステークホルダの同意を得て進めなかった、いや、そうしないと頓挫することを理解している人がいなかったか、言えない文化だったのかもしれません。


合掌。