プロジェクトのスケジュールはプロジェクトマネージャ自身が遅らせる

ワタシ「WBSみてるんだけどね、予実の較差の出ているワークパッケージが多いんだけど」
PM 「どれですか」
ワタシ「ファイル開いたかな。実績開始日が空欄なワークパッケージで絞り込みして。」
PM 「ちょっとまってください。できました。」
ワタシ「上からね。実績開始日が空欄&予定開始日が今週のがあるでしょう」
PM 「はい」
ワタシ「それ、いくつかあるけど記入漏れなの」
PM 「あ、1番目から3番目は記入漏れです」
ワタシ「4番目は」
PM 「未着手です。お客さまから情報提供を受けての作業なんですが受領できていなくて」
ワタシ「1番目から3番目はわかった。で、どうするの」
PM 「何をですか」
ワタシ「4番目だよ。どうするの」
PM 「定例でお客さまがいま忙しくて遅れるって聞いています」
ワタシ「ふーん、それだけなの」
PM 「はい…」
ワタシ「そうなんだ。じゃあ、その次のワークパッケージはどう」
PM 「これは別の作業が遅れていて、そっちを優先したので未着手です」
ワタシ「これはどうするの」
PM 「リスケ…しようかと」

ワタシ「じゃあ、今度は予定完了日が空欄&実績完了日が今週のがあるでしょう。それで絞り込みしてみて」
PM 「は…い、表示できました」
ワタシ「開始日と同じなんだけど、実績完了日が空欄のワークパッケージはどうして終わっていないの」
PM 「お客さまれレビュー待ちのとチーム内レビュー待ちです」
ワタシ「なるほど。それでどうするんだっけ。お客さまからの情報提供はどういうアクションを取ったの」
PM 「次回の定例までにはもらえるようにお願いしました」
ワタシ「その情報提供は、本当はいつまで待てるの」
PM 「ええ、本当は今週もらわないと後ろの作業の余裕がなくなります」
ワタシ「どうして『来週でいい』って言ったの。困るのは自分でしょう」
PM 「お客さまも忙しいと言うのでしょうがないと思って」
ワタシ「あのね、本当に困るなら今からでもお客さまのところに行って日程を調整し直してきた方がいいんじゃないかな」
PM 「でも忙しいって言っていたし」
ワタシ「じゃあ、チームメンバに無理を言うんだね」
PM 「そういうつもりです」
ワタシ「そうなんだ」

ワタシ「別作業が遅れて着手できていないのはどうするの」
PM 「リスケします」
ワタシ「リスケできる余裕があるんだ」
PM 「遅れているのでそれしか」
ワタシ「聞いたかもしれないんだけど、なんで先行のワークパッケージが遅れたんだっけ」
PM 「レビューしたら指摘が多くて、その修正に時間がかかって」
ワタシ「それ、『いつまでに』って最初の期限守るように指示したの」
PM 「いえ…していません。メンバが実績の日になるっていうので」

ワタシ「ひとつ聞いていいかな」
PM 「はい、なんですか」
ワタシ「このプロジェクトを成功させる気あるのかな」
PM 「もちろん、そのつもりでやっています」
ワタシ「じゃあ、どうして計画どおりにやらないの」
PM 「それは今話した理由があって、です」
ワタシ「それはさ、計画どおりに行かなくなる事情はあるよね。それで、起きた事象に対する『対応』はしているけどね」
PM 「はい、終わらせないといけないので」
ワタシ「でも、今のやり方じゃ終わらないし、納期までにシステムはできないよ。断言するけど」

PM 「なんでそう言い切れるんですか」
ワタシ「だって、作業を一つひとつ終わるためのアクションになっていないからだよ」
PM 「どういうことですか」
ワタシ「予定どおりにならない事が起きるよね。で、いつなら終わるというわけだ。で、PMさんは、それを受け入れいるじゃん。それって容認しているんだよね」
PM 「…そう…みえているんですか」
ワタシ「そう、ワタシには、プロジェクトが流されているように見える。意思を持って、いつまでに終わらせるというアクションになっていないよ」

PM 「じゃあ、計画どおり以外は認めなければいいのですか」
ワタシ「違うよ。計画どおりに行かないんだよ、プロジェクトなんて。それでも期限どおりに終わらすように自分の意思を示さないと。情報提供が遅れて本当にあとの余裕がなくなって困るなら、デッドラインより前から調整を始めないと。それでも遅れるなら『対応するための追加見積もりをします』といわないと」
PM 「…」
ワタシ「実際に、追加見積もりをする前に、こちらもスケジュールのやりくりができるならできる範囲でやるんだろうけど、それもいつまでもできるわけじゃないから」
PM 「そのつもりですが…」

ワタシ「いまの対処だとね、終わらないよ。だって先行するワークパッケージの遅延分をそのまま受け入れてしまっているもの」
ワタシ「同じようにね、メンバの作業が遅れたらスケジュールに影響が最小で済むような『実行できる対策を考えさせて』それを厳密にトレースしないと。そうしないとメンバはスケジュールに甘えるよ」
PM 「どう考えたらいいのかなぁ…」

ワタシ「PMとしてこのプロジェクトをどうしたいか、という価値基準で考えるのが一番シンプルだと思うよ」
PM 「このプロジェクトをどうしたいか、ですか」
ワタシ「そうだよ。その基準に照らせば今日遅れているワークパッケージの対処の判断は全部間違っていると気付くよ」
PM 「対策を見直します」