後輩ちゃん「先輩、胡散臭いコンサルがロジカルシンキングを振り回してうるさいんですけど」
「先輩!あの、お時間いいですか…」
「ああ、いいよ。どうしたの、今仕事何やっているの」
「某お客様の今オンサイトプロジェクトやっているんです。この前飲んだときに話したじゃないですか。忘れたんですか、ひどいですね。それは今度ワイン1本で許してあげます。それでわざわざ先輩の席までよったのはですね、プロジェクトの横並びのベンダーが五月蝿くてうるさくて。うちに被害はないんですけどね、隣のベンダーでロジカルシンキングを振り回しているコンサルぽい胡散臭いリーダの人がいるんですよ」
「うちの話じゃないのか。じゃあ気楽だ。しかし胡散臭いコンサルとは」
「見た目も胡散臭いですけどね。それでそのコンサルがドヤ顔でチームのメンバをダメ出ししているんですよ。真横でやられるからうちの若手に悪影響してもヤダなぁって」
「優しいねぇ」
「茶化さないでください。こっちは真剣なんですから」
「ごめん、これ以上奢るの増えても困るので真面目に聞くよ。どんな感じでロジカルシンキングを振りましているの」
「資料を作らせては『これはロジカルじゃない』みたいなことを言うんですよ。下手にロジカルシンキングにネガティブなイメージを持たれるのもどうかと」
「なるほどね。それで後輩ちゃんはロジカルシンキングについてはどう捉えているの」
「MECEとか、抜け漏れがないようにしようというアレですよね」
「アレって言われても」
「私の理解はいいじゃないですか。それより」
「いやさぁ、背景くらい確認しておきたいからさ」
「それでどうしたらいいですか、先輩」
「後輩ちゃんのチームではそうしたロジカルシンキングはどうしてるの」
「わざわざロジカルシンキングなんて言わないですね。淡々とインプットを要件で整理していく感じですけど」
「後輩ちゃんのチームではロジカルシンキングを前に出して作業をしているわけではないけど、ベースとしては使っているんだよね。そういうことだね。ただ、横の方で同じようなツールとしての論理的思考を考える方に使うんじゃなくて、アウトプットを批評する道具として使っているから、若手に勘違いされると迷惑千万だ、と」
「そこまで品なく言わないですけど、まあ、そういうことです」
「品がないって…ひどい。そうだねぇ。気にしなくていいんじゃないの」
「エェェェ。そんなこと言わないでくださいよ。わざわざ忙しいところを時間を割いて先輩の席まで参じてきたんですから。何はお土産ください」
「その心配性はリスクの識別に使ったほうがいいと思うけどさぁ」
「それはそれでやっておきますから先輩はこの課題をやってください」
「いつから自分の課題になったんだい」
「先輩に選択権はありません。いつものことです」
「論理的思考、ロジカルシンキング。どれでもいいけれどさ、あれは仮説を立て、検証して間違いだと気付いた時に素早くピボットするための道具なんだよ。覚えてるかな」
「あ、そうだったかも」
「仮説を立てるじゃん。その仮説が対象とするスコープ、さらに中での分類など段階的にふるいにかけ、処理をするじゃない。そうした組み立てには根拠の情報を必ず紐づけるじゃん。そうして立てた仮説を検証した時に間違いが見つかる時がある。それを見つけるのが検証なんだけれど。間違いが見つかったときにどこまで立ち戻ってどこからピボットすればいいかのルート分岐を決めてあるからその分岐の裏付けの根拠が間違っているのか、分岐の場所が間違っているのかとスコープを見直しやすくするのがロジカルシンキングのそれっぽい使い方だと思うんだよ」
「ロジカルシンキングぽいって相変わらず曖昧な先輩」
「でもさ、界面を決めるには根拠が必要だし、それは前提条件や制約条件で決まることだし。導きたいゴールは仮だし」
「それで先輩はどうしろと」
「後輩ちゃんたちの仕事の進め方、プロセスにそうした思想が織り込まれていて、プロセス通りに進めるだけでロジカルシンキングを使うことによる期待が得られるならそのままでいいじゃん、ってことだよ」
「そうなのかなぁ」
「いいんだよ。よそはよそ、うちはうちで」
- 作者: バーバラミント,Barbara Minto,山崎康司
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