KPIに稼働率を入れるとリソースとしてのエンジニアは幸せになれない
これは過去の経験談です。そのときにも思想的にはわかっていたことだけれど、組織上のKPIがあると新規事業の創出は基本的に無理だよね、ということをこれから書きます。
次世代を育てるために専任化する
マネージャになったとき、それまでメンバをパートタイマーのように使っていたアサイメントを育成の観点での障害を危惧して原則、一気通貫の専任制に方向転換させたんですね。
出来上がっている専門家であれば、勝手に自己研鑽するし、既にひと通りの経験をしているだろうから(これは後で外れた)、これから次世代を背負うだろう、中堅や若手に経験する機会を創出することを念頭に置いて。
KPIへの影響
SIerだとどこでも稼働率というコストのほとんどを占めるエンジニアのコストを顧客の対価と交換している比率のようなもの(雑でわかりにくい説明だ)のKPIを持たされているはずと思われるのだけれど。
パートタイマーのようにエンジニアをアサインしようが専任化で特定のエンジニアをアサインしようが総量的に見れば全エンジニアに対する稼働率となるので影響は全くありません。
ただ、KPIのトレースの単位がエンジニア単位に落ちると途端に影響が出始めます。パートタイマーでアサインしていると何かしら業務にアサインされているので稼働の高低はあるにしても稼働しているのでカモフラージュできるんですね。
KPIがマイクロ化されると無駄が増す
一方、専任化するとたまたまアサインする仕事がないと稼働がゼロになっていきなり問題化するわけです。
ここで無理をして案件を取ってきたりすると普段なら掴みもしない採算の怪しい案件を取ってきたり、リスクをろくにみないで取ろうとしたりするわけです。そんなんなら、稼働させない方が何倍も特なのですが。
例えば、採算の怪しい案件なら稼働させて手に入れる対価とコストが同党の場合、なんのために働かせているかが甚だ疑問です。
さらにリスクの高い案件を取ってしまったら、お値段以上のリスクをテイクすることになるので管理コストも増え、結局、マネージャから現場までお疲れさんとなるだけです。
何か、エンジニアの育成のリターンがあるとか、新技術の習得があるとかあればいいのですが、そこまで考えておらずそうした理由づけは後から屁理屈として作られるだけです。
どう足掻いても、誰も幸せになれない。
リソースとしてのエンジニアと稼働率とKPIの三竦み
リソースとしてのエンジニアを業務にアサインすることがビジネスであれば、エンジニアを業務にアサイメントしないと事業が成り立ちません。だから、エンジニアを売る(リソースのコストに変える)必要がある。売り方は色々あるけれど。
ビジネスの状況を財務的に把握するためにはエンジニアをどれだけコスト化しているかを把握したくなるものです。わからなくはないけれど、それを率にしてしまうところまでやってしまうとやり過ぎです。コスト化の状況を把握するだけなら金額で把握すればいいのだから。
KPIにするのは事業としての採算ラインを確保したいためのコントロールの指標のためですが、それひとつだけでも実はないということもあって。
それは、アサインされているエンジニアから見たとき、稼働していないエンジニアが楽をしているように見えてしまうことです。アサインされない理由もときどきなのですが。
例えば、たまたま案件がない、技術がフィットしない、などなど。これを変な公平という概念を持っていくると途端におかしくなる。アサインされない理由によって売れないエンジニアの策を必要に応じて立てればいいのに。
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