PDCA、ふりかえり、KPTとFUNの意味

多分、SIerではISO9001の認証を継続しており、個人情報保護法等の情報セキュリティの面からプライバシーマークからISO27001の認証・認定へ広げざるを得ない環境に置かれている。

これで何が起きるかと言えば、システム開発の現場ではISOのPDCAのサイクルが多重にのし掛かり、開発の一部であるがシステムの動かないプロセスコントロールにコストを回すことになる。

本来のISOの狙いからいえば、システム開発や情報保護などスコープに対しての改善を促す改善プロセスをシステム開発や保護対象の情報に適用していなければならないが、開発スピードとリソースの確保の充足性の観点から、認証をクリアするためだけの『やったことになっている』ことを確認するプロセスを記録するだけに成り下がっているのではないか。

以前から述べているように、開発作業プロセスに品質管理プロセスを組み込んだ作業プロセスを開発標準としてプロジェクトに適用できていないのであれば、PDCAそのものが効果的に行われていない。

PDCAの信者ではないので、擁護をしない。それでもここ数年のPDCAに対する逆風は、改善プロセスをビジネスにテーラリングして、やってから言っているのかと思う。

ISO9001の認証を受け、PDCAを回していることになっているプロジェクトで、でも、実際の開発工程での品質管理はレビュー結果やテスト結果での指摘件数ゼロもしくはバグゼロで問題なしとしているようなプロジェクトに改善は存在しない。

もっと言えば、そのプロジェクトマネジメントで良しとしている組織に改善は存在しない。単なるモグラ叩きがうまくいっているだけに過ぎない。

そのようなプロジェクトにおいて、良さそうだからと『ふりかえり』を導入しても効果を得られないことはやる前から自明である。

そのようなプロジェクトでの『ふりかえり』はふりかえりの本来から得られる経験からの学習と作業プロセスの改良は行われないことは容易に想像がつくだろう。

何しろ、工程の終盤にどうだったかを検証してもフィードバックしようがないのだから、意味はない。そのプロジェクトチームが継続して次のプロジェクトをするのであれば、とても効果は薄そうだがほのかな恩恵にあずかれる可能性は残っているが。

ふりかえりの様々な手法の中で選ぶとするとメジャーな『KPT』を選ぶことが多いと思われる(横型のT字に分けて書くのが直感的にわかりやすそうに見える)ため選択されやすいし、実際に何度となく実戦で使っている。

このKPTを効果的にやろうとするとPDCAの改善と作業プロセスにおける改善を取り込むリソース(時間とコスト)の確保を必要とする。KPTがうまく行かないと感じているのであれば、作業プロセスの改良を前提とし、2つのリソースを確保すると少し良くなっていく。

ここでわかるが、PDCAKPTもプロセスコントロールにコストを割かなければならない。

そしてそれはコードを産まない。

コードを産まないが、良いコードを産む環境の可能性をもたらす。

そうした改良は生産に結びつかないし、地味であるから注目を浴びない。でも、チーム全員でやらないと改良で得られる効果も低減してしまう。

それをまるっとオブラートに包むのが学びという名のFUNではないか。

壁にペンキを塗るのはFUNだぜ、ということにしておくわけだ。実際、壁は改良される。

それでもいいと思う。何より仕事は終わらせろ、だ。それは楽しい方がいい。

 

 

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