トラブると品質が足らない、向上っていうじゃないですか。


「品質ってなんでしょうね。」
「どうしたの、突然。」
「技術相談で呼ばれたプロジェクトの人が『品質が悪いから良いやり方教えて』って無茶ぶりされたんです。」
「ふうん。」
「ふうんって、興味なさそうですね。」
「あーごめん、昨日の夜も今朝も重たいレビューがあってね。魂抜けてる。」
「どうしたらいいですかね、品質。」
「まだ続いているんだ、それ。」
「何かヒントもらおうかと。」
「そう言われてもなー。だいたい彼らは品質の定義してるんかね。」
「はー、どうなんでしょう。」
「キミはどう思ってるわけ。」
「品質ですか。」
「そうそう。」
「機能の充足度合、ですか。」
「どうしてそう思った。」
「だって、トラブると品質が足らない、向上っていうじゃないですか。」
「そうか。ワタシはちょっと違うね。」
「どう考えていますか、品質。」
「構成要素だと思うよ、品質は。」
「構成要素ですか。」
「そう、構成要素。」
「どうして、ですか。」
「顧客要求の塊だからさ。顧客要求が塊になって品質の体をなしているんだな。」
「顧客要求が品質ですか。」
「トラブるプロジェクトはこう言うだろう『品質を向上させなきゃ』って。」
「よく聞きますね。呼ばれるプロジェクトは。」
「向上っていうけど、実態は顧客要求が欠落していることがテストでわかるから慌てて対策するわけだ。品質向上って言う名目で。」
「よく聞きますし、ヘルプしてます。」
「テストして顧客要求が充足していたらそんなことにはならない。」
「そうですね。」
「つまり品質がかね備わっている、と言うわけだ。」
「それがいいです。」
「でも現実は機能が未実装や動作不良で顧客要求が実現できていない。」
「…。」
「だから、品質が足らない。じゃあ、品質向上と思考しているわけだ。」
「へえ。」
「おかしいだろう。」
「おかしいですね。実現しないといけないことをやっていないだけなのに。」