知識の上での育成

先日のブログで「#ほんとはT字型が適当なのですが…」と書いたら、「丁字でも同じでは」と質問があったのですが、スキルやコンピテンシの形状を表現するなら丁字もT字のどちらも同じです。単純に「T」の文字がデザイン的に好みという話でした。


さて、シルバーウィークも5日もあると、積み上がった本でも読もうかと思い本を開くけど睡魔に襲われてついついお昼寝してしまうのはなぜなんでしょうね。やっぱり読書は電車の中に限るような気がするけど休日に日がな一日そんなことをしていたら少しは積み本が減るのかしら。さらに悪いことにKindleでは積み上がらないんですよね、本が。やっぱり物理的に積み上がらない本にはどうも切迫感がなくて、ついつい放置して賽の河原のごとくKindle本を積み上げてしまう…。


とはいえ、読書をするのは読んで楽しむ娯楽もあるけれど、仕事や趣味の知的好奇心を広げるというために読んでいる方が多いような気がするし、内容そのものもあるし、読んでいて出会う今まで知らなかった「ことば」の時もあるし。


こうして自分の関心、興味がどこに向いているかで取り入れようとすることは違うんだけれど、どっちにしてもワタシ自身が関心を持たなければたとえ視界に入っていても目には触れないし、目の前に陳列されていても手にとったりはしないんです。これって、誰しも同じだと思うんですが。


ワタシの人生でジャンルは別にして本を読んでいた時期があって、最初は高校生の頃だったかも。好きな作家の推理小説を古本屋で随分買っていたような。そのあとはいつだろう。もしかしたら、今、なのかも。社会人になった頃も読んではいたけれど雑誌が多かったような。新井素子を読んでいたのはいつだったか。


その中で何か1冊選べと言われるとちょっと戸惑う。本を読むのは好きだし、感動もするし、涙もろくもなったから落涙もするし。結局、こうした質問にはいつも同じようにこれをあげる。


男振 (新潮文庫)
男振 (新潮文庫)
posted with amazlet at 15.09.20
池波 正太郎
新潮社
売り上げランキング: 96,243


じゃあ、「仕事方面では」と聞かれるとホント困る。これが自分のキャリを変えたとか、命拾いをした、というような本がないから。「これ、一押し」と言える本があれば簡単なんだけれど、そういう本はないんですねぇ。


そういえば、システムエンジニア、特に、アーキテクト、プロジェクトマネージャの育成に頭を悩ませているマネージャは多いようですが、ワタシの周りにも相応いるので世間でも同じでしょう。そして、この2つの専門家はなり手が少ない。特にプロジェクトマネージャはシステムエンジニアにとって不人気な職種のようです。甘いことを言っても警戒して誰もスルーしちゃう。
#楽しいのに、プロジェクトマネージャって。


でも、育成を促進する側にも問題があって、成り手が少ないとかメンバが育たないと文句を言うマネージャは、大概がマネージャ自身の経験に基づいた育成という名の放任主義をしているのも関わらず、期待だけを膨らまして勝手にしぼませていると思っているんじゃないかなぁ。


大体その育成方法って「知識なき育成」であって、「実現可能性のない努力」にリソースが費やされているですよ。自分が勝手に育ってきた体験を押し付けてもダメです。人格が違うんですから。


どうせ育成の手間をかけるなら、実現の可能性のあるリソースの使い方をすべきだし、そうすると意思決定している時点で経験値ではなく体系化された知識の上での育成を選択する必要があるんです。育成の範疇は形式化された知識の習得と実行能力というスキルやコンピテンシの学習と実践になるので基礎体力を身につけさせるという意味合いで、ですが。


ただ、その先は応用になるので一律では育成できなくなることは肝に銘じておく必要があります。それを一律の教育で乗り越えようとするから無理が生じてしまうんです。こうした育成に関することもそのつもりがあれば本から学ぶことができるのですが、どれだけのマネージャがそうしているかは知る術はありません。たとえ上司であっても。


これは残念ながら育成や教育は組織や上司がしてくれるものだと思っているシステムエンジニアにとっては過酷なことかもしれません。いや、そういったエンジニア層には無縁な話なのです。マネージャのリソースだって有限ですし、投下したリソースの効果を期待すれば一極集中させるのが世の常ですから。


でもね、それが常套手段であってもそれだけしかしていないと次々世代が育たないんですよね。育たないというより、育つ候補を見つけられないの方が正しいのかもしれない。マネージャならそこまではマストで目にかけておかなくちゃ。そのためにも「知識の上の育成」をしないといけないし、その知識は経験だけでは充足できないですからマネージャは自ら率先して読書に迫られるはずなんですが。