業績が好調なSIerの3つのリスク

某所での会合での懇親会で、偶然、お隣になった方の会社の業績がとても好調なのだと聞いていた。もちろん、エンジニアの人手不足感もこれまでになく、一人のエンジニアが複数の案件を抱えていたり、案件の適用技術とは違うエンジニアをアサインせざるを得ないほど引き合いがつよいと嬉しそうに話していた。

そうした状況に至る前、過去には赤字プロジェクトが起きると本来利益となるところのかなりの部分が飛んでしまっていたが、ここのところ安定したプロジェクトばかりなのだそうである。

それはよかったですね、と相槌をする。

ただ、業績に連動して賞与を支払うので、翌年度は固定費が増え、必然と予算が積み上がるのだという。そこまで生々しく話していいのかと思いながら聞き流していた。

ふと、この会社は近い将来、いや、現場では、実はビジネスの問題とリスクが頭を過ぎり始めると話を聞いていながらも上の空となってしまった。

 

たったこれだけの情報で、どうしてビジネスに問題が発生し、リスクも感じ取ったか想像できるだろうか。

 

SIビジネスの伸び悩み

人手不足でエンジニアが足らず、一人のエンジニアはいくつもの案件を抱えている。これはエンジニアが担当できるプロジェクトが上限に達していることを示唆している。あとどのくらいののりしろがあるかは知りようはないが、多分、閾値を越えているかもしれない。

つまり、ビジネス上の売り上げは今が天井かもしれない、ということである。言い換えれば、エンジニアの数が売り上げとして紐づくので、エンジニアの数、それも社員数が母数として増えなければ、売り上げは頭打ちになるだろう、ということである。

 

プロジェクトリスクの高まり

可能性の話ではあるが、エンジニアが複数のプロジェクトを抱えれば、エンジニアのリソスは分散され、1つのプロジェクトへ掛けられるリソースも希薄化する。

何が起きるかというと、エンジニアのリソースが減るので目が行き届かなくなってしまうのである。

そうすると、課題の遅れの認識、品質不良の見落としが起きる。そうした事象を事象として気づく機会が減っていくことでプロジェクトの潜在的なリスクが高まってしまうのである。

言い方を変えれば、兵站が伸びすぎている嫌いがある、と言ってもいいだろう。もう、現場はいっぱいいっぱいに違いない。そうした環境下でギリギリで回しているのである。

そうしたことをマネジメントは想像しなければならない。大局では悲観的に物事を見るのがマネジメントの役割だ。

 

できるエンジニアの離職

業績も良いのでボーナスも増えているからエンジニアにとっては忙しいが辞める理由はなさそうに見える。

ところが、である。こうした状況下で優秀な、それも技術に長けているエンジニアはその会社を去るだろう。

なぜか。

エンジニアにいくつものプロジェクトを任せるということは、技術よりからプロジェクトマネジメントよりの仕事をしなければならなくなる。技術をやるはずのエンジニアにプロジェクトマネジメントをさせればどう感じるだろうか。

自分は技術をやりたい、新しい技術と戯れたい、と考えるだろう。

給与はいいが、技術からだんだんと引き離されるとき、エンジニアは不安になり、転職を考えるのである。技術が理由で会社を移るケースは少なくない。

さらに言えば、こうした事象が数件起きたときにはとてもまずい状況を想像しなければならない。技術ができるエンジニアの流出が起きるとその会社の技術力がガクッと下がる。それは、兵站が伸びきったときに技術的なリスクを雪だるま式に増やし、トラブルを引き起こすが、立て直すだけの技術を持ったエンジニアはそのときにはすでに去っているのである。

つまり、技術力低下を示唆しているのである。

 

 

 

 

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