ロクでもないプロジェクトのシステム運用と自分のキャリア
ロクでもないプロジェクトは世の中に多い。実際、ロクでもない案件にアサイメントされたことがある。会計システムの再構築プロジェクトは、プライムベンダとサブコンの関係は良いとは言えず、顧客も契約後に値切るような慣習を持つ会社だった。
当時、イケていないエンジニアだった自分は、それでもできることをやり、アプリ共通のパッケージを作ったりしていた。ロクでもないプロジェクトを自分なりに眺めて、システムレベルの相関図がないことに気づき、誰もが担当部分しか手掛けていなかった全体のジョブやDBを網羅した新システムの全体関連図を作ったりしていた。
サービスインをすればシステム運用が始まる。現行システムのシステムはレガシーレベルを超えた神話のようなシステムで運用担当のエンジニアはろくに帰れず、帰ってシャワーを浴びたところに呼び出しされるような代物だったらしい。
その神話なシステムの次世代システムの運用をやってほしいと打診があった。現行システムのひどいシステム運用を知っていたり、顧客のいわゆる客筋を知っていると反射的に『やめておけ』と頭の中で誰かが囁く。
いくら新システムに切り替わったからと言って、筋の悪い顧客の相手をしつつ、全体のシステムデザインをした訳でも、業務知識もろくにないシステムのお守りをするのはやれるイメージを持てない。
とは言え、打診と言いつつもこれは逃げられないものだと勝手に思っていた。今なら瞬殺でお断りしていただろう。
打診を聞いたあと、仲の良い元上司に再構築の案件で入っていたプロジェクトの運用の打診があったことだけを伝えた。
人は期限があればそれを希望にできる。
ただそれが裏切られなければ。
どうしたらこの打診を回避できるか。
考えた。
当時はまだ交渉のスキルは持ち合わせていなかった。
でも考えた。
これはやりたい仕事ではない。
あるところで諦めと覚悟をすることにした。
考えて、どうしたか。
打診をしてきた上役に2つのことを伝えた。
「自分はこれこれというやりたいことがある」
「もし運用の案件をやるなら1年なら受ける。それ以上はやらない」
これこれというのは実は具体性のある名詞が入っている訳ではない。ただ、この方面の仕事をやって行きたい。そう伝えた。
しばらくしてその話は有耶無耶になった。代わりの誰かにシステム運用のお鉢が回ったのだろう。
後から耳に入ったのは『あいつはやりたいことがあると言ってた』という割と好意的なトーンの物言いだった。
直接は聞いていないのだが、仲の良い元上司は動いてくれていたかもしれない。マネージャ同士は割と繋がっている組織だったからそう言ったこともあっても不思議ではない。
そのあとのプロジェクトは仲の良い元上司から案件を紹介された。それを考えると裏で手を回してくれていたのだろうと思う。単に仲が良いだけではなく、厳しいアドバイスをしてくれる元上司はそういうところがあるマネージャだった。
次の案件がエンジニアのキャリアにとって、大きなピボットになるとは当時思いもしなかった。
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