トラブルで再発防止策に手続きを追加ばかりしている人は、セブンカフェをお手本に“しくみ”を作るスキルを鍛えた方がいい


エンジニアでもプロジェクトマネージャでもマネージャでも、現場の作業のふるまいが一度でも出来上がってしまうと中々変えることは難しいもので、例えば作業でトラブルが発生するとそのふるまいに再発防止のために安易に手順を追加することを選択しがちです。


“安易に”と表現したんですが、ある日、セブンカフェのコーヒーサーバの前で、ふと、

「いや、安易に選択しているじゃなくて、それしかやり方を知らないんじゃないの?」


と、思いついて「どっちかっていうとそれか……。」なんで一人納得しながらセブンイレブンを後にしたんですね。


“しくみ”とはそれをやらないと先へ進めない手続きのこと
ワタシは、“しくみ”とは単なる手続ではなくて、それを踏まないと先へ進めない手続き、だと思っています。なので、しくみ作りとなると、対象とするアウトプットを得るための必要な手順を構築するわけですが、そのアウトプットで求められる品質を満たす手順でなければそのしくみ作りは見直しが必要になるのです。


そして、そのしくみ自体はアウトプットの要求品質の変化に応じて更新されるもの、でもあるのです。


ところが、しくみに求められるアウトプットの品質を理解しないでしくみ作りを始めるものだから、出来上がるしくみ自体が要求品質を満たさない。当たり前ですが、その要求品質を満たしていないしくみで幾ら作業をやってもそのしくみ作りで得られるアウトプットはリジェクトされるわけです。


そこをわかってしくみを作れるエンジニアが少ない。だから、

“再発防止策=効果のない手順の追加”


が蔓延するわけです。
でね、そもそも「なんでそうなっちゃうの?」と呆れる感じもなくもないんですが、「良いお手本なり、演習教材がなんじゃないの?」って思い至ったんですよ。


セブンカフェにみるしくみ作り
セブンイレブンのコーヒーはセブンカフェなんて自称しているようですがコーヒーサーバーのデザインがアレとか言われてますよね。左右のLeftとRight、カップのサイズのlargeとRegularのアレ。言われれば確かにUIデザインとしてアレなんですけど、ワタシは迷いもせず買えたので落第はしないけどまぁ教材になっちゃうベルなんでしょうね。


それはどうでもいいんですが、そこでコーヒーを入れているときにセブンカフェのコーヒーを入れるまでのしくみが良く出来ているなぁ、と思ったわけです。

コーヒーの種類 ホットとアイスコーヒー
サイズ レギュラーとラージ
カップの置き場 ホットはカウンタの中、アイスコーヒーは冷凍ケースの中

これを一つのオペレーションで終わらせたいわけです。これが要求品質ですね。で、不正に飲まれると赤字になるので防犯もしたい。


その結果が、コレ。

アイスコーヒーはカップをレジに持っていく→会計を済ます→セルフでコーヒーを入れる
                    ↑
ホットコーヒーはレジで注文する     +


アイスとホットの違うインプットに対して、従業員から見た場合の視点では、一つのプロセスで済むようになっている。一見、「へ?そんなこと?」って思うかもしれないけど、

要求品質を明確にする
しくみはシンプルに


を考慮したデザインにすることは優しことではないんですね。データベース設計の正規化でデータの本質を見極めるのと同じように手続きを見極めてデザインしないと無駄なことを織り込んだしくみになってしまうんです。


セブンカフェの様な良く出来ているしくみは実は気づきにくいんです。だって、すんなりそれができてしまうから。でも、そのしくみを作ろうとするとやったことがないと利用者としてそのしくみを使うようにはデザインできないんです。


自分でしくみ作りをデザインするとき、こういった何ともないしくみを“見つける力”と要求品質で求められるコトを抽出する訓練をしておくとどれだけ日々の作業の手順に無駄や抜けがあるかまざまざと知ることになって、なんとも言えない味わい深い日々を送ることになるので、そうした感想を持てるようになったら「一人前になったんだ。」と自分で自分を褒めてあげましょう。