SIerのエンジニアは自分の組織ではやれないと言っている限り価値は理解できない
顧客やユーザと対話することが価値とか、ドキュメントを作るより動くソフトウェアを作ることに価値があるとか、契約を盾にして交渉するより顧客と一緒になって働くくことに価値があるとか、作った計画どおりに作るより必要なものを必要なときに作る方に価値があるとか言うけれど、どれだけのエンジニアがそうした思想、考え方を理解できるのだろう。
上述はアジャイルソフトウェア開発宣言をくだけた語調で書き直したのだが、エンジニアはこれを読んだだけで理解して実践できるのだろうか。
SIerのエンジニアにシステム開発における価値に対する理解を変えようと言ったところで変わることは期待できない。変われるエンジニアはごく少数だろうし、そんなエンジニアは言われる前から勝手にやっている。アーリーアダプタに相当するエンジニアは、もう、ずっと先に、3週くらい前を走っている。
では、なぜSIerのエンジニアは価値観を変えられないのだろう。
Sierのエンジニアは組織の中で駒のように動かされる。ほとんどのエンジニアは維持管理プロジェクトに押し込められ、駒なのに動かされることもなく、同じ場所でじっとしているだけである。
エンジニアのマネージャも数年おきに配置転換されればまだマシな方で、エンジニアと同じように固定化されていることも多い。最前線のマネージャとして顧客のインタフェースをさせられているからだ。
価値観を変えられないのは、変える必要のない環境で身体の芯までSIerのビジネスの価値観が染み付いているためだ。だから物事を捉える、決めることの所作がSierの意思決定の基準で行われる。
若手のエンジニアであっても、日々、SIerの価値観で意思決定を繰り返し見聞きし、そうすることを求められればどういった行動を取るかは手に取るようにわかるはずだ。
こうしたSierがアジャイル系のカンファレンスで見かけるようになった。名刺交換をしてロゴを見ればそういった傾向であることがわかる。
SIerもそういったカンファレンスに参加するようになったのは良いことではないかと思うのだが、ちょっと違いがある。自分たちの仕事を、ビジネスを変えるために来ているのではなく、単なる情報収集に来ているのである。
講演を聞きたら自分のプロジェクトやチームで試したくなるものだ。ワークショップに参画すれば、自分の周りでやってみたくなるものだ。実際、何かしら良さそうだ、と思ったことはやってみるだろう。
SIerの参加者の多くは、良かったが自分の組織ではやれない、という。それはそうだろう。正しい。なぜなら、自分の組織ではやれないとい思う、判断した基準=価値が違うからだ。その価値を入れ替えないと試すことさえできないのだ。
ただ、SIerでも一部の身の回りを良くしたいと思っているエンジニアは組織の価値が及ばない自分の範疇で始めてしまうのだ。そして良さが、価値の重さがわかるとSIerを去っていく。
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