部下の素行が悪いんです、リーダのパフォーマンスが悪いんです、だから転職したいんです

一つひとつ課題を終わらせてもやりたいことが積み上がる。勘違いして欲しくないのは、炎上しているとか殺伐とか予算をケチっているとかメンバのスキルがチープだとかではない。それぞれのスキルは自分の目にも十分な働きをしているし、能力を発揮してもらっている。とてもありがたいし、感謝しかない。一方、業務サイドからのIT化のリクエスト、業務改善の要請は日々積み上がる。スピードで対応できないのはとても心苦しい。

そういった事情もあり、今年になってそこそこの人と会っている。チームのメンバのリソースとは別に事業を進める上でやりたいバックログはいくらでも積み上がる。必要だと考えているポジション(期待する主な担当業務と役割)や想定している給与テーブルのランクは相応で採用したいと思っているので予算は積んである。今いるメンバのコンピテンシレベルと給与と比べても違和感ない。ポジションによっては今いるメンバより高い能力のエンジニアを採用したいと考え、期待するスキルレベルをメンバと話していてもそれに見合う給与テーブルを設定できているからチームで合意できている。

転職する理由はエンジニアによって様々だ。それはそうである。個々の家庭の事情(育児や介護)、働き方(毎日終電では体が続かない)、業績評価の不一致、やりたいことを見つけた、新しいキャリアに挑戦したい…などキリがない。

そうした背景を抱えながら、エンジニアは転職先を探しているのだろう。

あるケースで採用候補者として面接したエンジニアがいた。大手の現職の職位はマネージャなのだそうだ。レジメの説明をしてもらい、そのレジメに沿って質疑をはじめる。

こちらはポジション、期待する技術、マインドセットを求人情報として公開している。組織のページでは価値観も明記している。必要としているエンジニアは、採用面談の前までに手に入れることができる環境は揃っている。

つまり、こちらから提供できる情報は事前に提示してあるのだから、電車で移動している間に予習しようとすればいくらでもできるし、そもそも面接を受けることを意思決定してから十分時間はあったはずだ。

一見、穏やかに現行業務での役割、課題と解決、意思決定のポイントなどを尋ねた後、転職の動機を聞いてみたら

  • ある部下の素行が悪い。前任者のマネージャも上長も手に焼いて放置している
  • リーダ役のエンジニアのパフォーマンスが悪く手を焼いている

などなど批判しか出てこない。そういったこともあるかもしれない。コミュニケーションが捻れたチームでパフォーマンスを出そうとしてもろくなものにならないのはわかる。そう、メンバの一兵卒のエンジニアならできることは限られるだろう。聞く耳を持ってもらえなかったり、無視されたり、面倒臭い奴と思われたりするかもしれない。改善したい、良くしたいと思って、勇気を出して接したのに。

でも、この例の採用候補者は、現職ではマネージャである。前任者や上長が放置していても自分の裁量で色々とアプローチはできるのではないか。チームにとって悪影響しかもたらさないと判断したら素行の悪いエンジニアは人事に掛け合ってでもパージしなければならないのではないか。

リーダ役のエンジニアのパフォーマンスが期待通りでは無いのだとしたら、それは改善するために手を尽くさないとチーム全体のパフォーマンスは期待に近づかないのでは無いか。

最初は違和感だった。あれ、この人マネージャだよね。マネージャがメンバの批判を一方的にするのはおかしく無いか。裁量はなんのために持っているのか。メンバのパフォーマンスを引き出す環境づくりをして初めてメンバはパフォーマンスを出すのでは無いか。あれ、この人は何ができる人なのだろう。

終始、和やかに、穏やかに会話は進み、時間を超過してまでコミュニケーションをとり、双方その場で知りたいことは尋ねあった。

会議室に残ったのは違和感だけである。あるメンバの素行が悪い、リーダのエンジニアのパフォーマンスが悪いという傍観者のような他人事のように話すマネージャ。

あなたはこのマネージャを採用したいだろうか。

 

 

 

 

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