センパイとコスト意識とランチと

「センパイ、お昼行きませんか」
「もうそんな時間かー、今日はどこに行こうか」
「今日は、コスト意識を持ってお財布に優しいお店を選びましょう」
「何っているんだ。いつもはガッツリと食べているのに」
「そんなことないですって。いつも、コスト意識を持って仕事をしているんですから」
「嘘とは言わないけどさぁ、嘘っぽいわ」
「そんなことないですってば」
「それで」
「何がです」
「何があったのかって聞いているんだよ」
「ああ、マネージャのメールでコスト意識を持てって書いてあったから実践しているんです。エライでしょ。褒めてもいいんですよ」
「またコスト意識が出てきたか。何度目だ、コスト意識。今は前みたく業績それほど悪くないはずじゃなかったっけか。もしかしてどこかでまた炎上しているか…」
「何をブツブツ言っているんです。危ない人ですよ。ブツブツ言わなくても危ない人ですけどね、センパイは」
「はいはい、それでどこに行きたいの」
「そこはほら、コスト意識の高いセンパイが良いお店をオススメしてくれるんですよ。そうじゃなかったら、美味しいお店に連れて行って奢ってくれてもいいんですよ」
「何言っているんだ…。そうだ、前から気になっていた店があったんだ、そこに行ってみる」
「わ、新しいお店の開拓ですね。ちょっと楽しみ」
「で、センパイ、コスト意識を持ってってなんですか」
「(ずるっ)え、さっきまでコスト意識、コスト意識って言っていたじゃん。わかってないで言っていたの」
「えへっ」
「…いつものパターンか。そうだな、会計できるんだっけ、簿記とか」
「さっぱりですね」
「家計簿つけてる」
「いいえー。上限決めてそれ以上使わない様にはしてますよ」
「(あら、感心な子だな、いや、騙されちゃダメだ)そうだなぁ、仕事でのコスト意識の話だからなぁ。例えるなら家計がイメージしやすいんだけど実務と違うからなぁ」
「一人でブツブツ言っているとおまわりさん呼びますよ」
「いいから、それより注文しよう、これな」
「じゃあ、こっちにしようっと。それでコスト意識ってなんですか」
「そうだな、まずは言っている人の立場で考えてみようか」
「えっとマネージャさんのことですね」
「そうそう、それでどうしてコスト意識を持てって言っているんだろうね。何か思いつく」
「えー、わからないから聞いているのに。センパイは灰色の脳細胞はちっちゃいんですか」
「脳はみんな同じサイズらいしいよ」
「またまたまたご冗談お上手、センパイは。同じにしないでください」
「そうだねー(棒。さて、どうしてコスト意識を持てって言っているのだろう。文字面から、文面通り捉えれば、コストを認識しなさい、っていうことになるね。認識するということは業務上、ーー多分、それぞれのメンバの仕事上で関わる範囲というかコストの責任を担う範囲でーー、だろうと思うけれど、プロジェクト上のコストに何があるかをまずは知らないと認識しようがない」
「そうなんだ」
「そうだよ。知らないと理解できないからね。コストとは持っているリソース、資源だよ、それを外に払い出す行為だ。キミの給与は、プロジェクトの予算から支払わされている。それで、だ。プロジェクトにアサイメントされるとアサイメントが終わるまで固定費としてプロジェクトからコストが支払われ続ける。たとえ、仕事の成果があろうともなかろうとも」
「難しいこと言いますね、センパイのくせに。えっと、遊んでいていも仕事をちゃんとしていても同じ様に給与がもらえるってことですよね」
乱暴に言えばそういうこと。それを認めてくれるかどうかは別だけどな」
「是非それでやらせてくださいー。プロジェクトのニートにな・り・た・い」
ニートって古いな。死語だよ、死語。それでだ、ここでも一度、元に戻ってコスト意識を持てってどういうことかを考える。さずがにニートをしているメンバはいないはずだ。進捗でバレるからね。その上で考える。何がコスト意識に結びついているか」
「面倒なこと考えますねー、もう、スパッと行きましょう、センパイ」
「キミが聞くから考えているのに…もうやめるよ」
「やめないでー、素敵、センパイ」
「そうかな、かっこいいかな、オレ。じゃあ、続ける。プロジェクトにアサイメントされているメンバは何かしら成果を出している。その上で、コスト意識を持てと言っているとしたら、何に大してか、だ。何も支払っている給与を減らしたいわけじゃない。そんなことをすればみんな辞めてしまうからね。じゃあ、経営者として何を求めているかだ。そうか、効率なんだな」
「効率ってあの効率」
「あのがなんのかはわからないけどさ、たぶん、その効率。プロジェクトのリソースに対して支払っている給与などの費用をどれだけ効果的に利用しているかということだな」
「小学校5年生の女の子に説明するくらい優しく」
「意味がわからない。エンジニアの1人月の成果を1とする。面倒なので給与も1とする。エンジニアが1働いたら、プロマネは1のリータンの成果を得られる。計画どおりに」
「オンスケってことね」
「まあ、そうだ。そこで給与はそのまま1で、エンジニアの1人月で得られる成果が1.5になったらどうなる」
「生産性が上がってますね。そんなことあり得ないでしょうけど」
「あったとしたら」
「仕事が早く終わりますね」
「そうしたら」
「早く帰るー」
「いいけどマネージャとしたら、0.5人月分の成果を先取りできるわけだ。コストを伴わなくて」
「ラッキーですね」
「そうなんだけどさ、つまりだ。マネージャは効率を上げなさいと言っていると考えていいってことになる」
「でも同じやり方だとそんなことはゼーッタイに地球上で存在しないですから」
「どうしたら実現できる」
「やり方変えないと」
「そういうこと。作業プロセスを変えて効率化を図りなさい、ってことだよ」
「そうすると色々ツールとか必要になりますよ。お金がかかるとコストが増えますよ。いいんですかそれで」
「そうした生産プロセスを変えても、そのためのコストが増えても全体のコストダウンが計れる様な効率的な作業ができる様にコスト意識を持ちなさいってこと」
「そんなの暗黙が多くて普通のエンジニアに理解なんてできないですから。無理ゲーです」
「まー、伝わらないわな。だから繰り返し言っているけど全く効果がないんだよ」
「そこはコスト意識を持ってやってもらわないといけませんよ、センパイ。今日もご馳走様でした」

 

 

STARTUP(スタートアップ):アイデアから利益を生みだす組織マネジメント

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