50代で求められるタレント性

知り合いの関係者で話を聞きたい人がいるらしく、日程を調整して日本で屈指の乗降数を誇る繁華街まで移動する。構造が複雑でどこに受付があるのか戸惑いながらもオフィスまでたどり着く。

打ち合わせまで時間があるらしく、特別にオフィスツアーが勝手に始まったので付いていく。セクションごとに、ああだ、こうだと説明をしてくれつつ、所々で人を紹介してくれる。自分のようなしがないおじさんでも案内をする方が相応なので、みなさん手を止めて応対していただく。担当のお仕事によっては、こちらから催しや交流のお誘いをしてみたりする。

インタビューというかヒヤリングというか、事業の相談というか、そう言った類のご相談を伺う。

端的に言えば『あるセグメントの人材の中で、光るものを持っているタレントはどうしたら探せるか(かなりな意訳と言い換え)』という相談であった。

会話をしていると、多分やっているのだろうが、あるセグメントに対する情勢を押さえられていない印象を持ったのだが、こちらもそこは専門ではないし、分析をしたわけではないので、そこにスティックすることもない。

素人考えながらも、『あるセグメントはここ半年前くらいから母数としては増えているはずだ。ただ、ノイズ(箸にも棒にも引っかからないタレント)が劇的に混入している』という私見を話す。

光るタレントを見つけるのもそうだが、箸にも棒にも引っかからないタレントを上手くフィルタリングできないと相談者側のリソースを無駄に食い潰しかねないことも、それとなくコメントする。

フィルタリングでふるいで落とされたタレントの方が、実はその相談者を必要としているはずであるが、なにぶん、箸にも棒にも引っかからないタレント性を持ち合わせているから、そこを逆に扱うビジネスモデルを考えることもできる。ただ、それをビジネス化しても幸せ半分くらいのような気がする。

同席した知人と意見の一致をみたのであるが、相談者の『あるセグメント』の『ある』と、話を聞いていたこちらの見解とは少しズレを感じていることを率直にお伝えする。

相談者は割とハイエンドのタレントを想定しているように捉えたのだが、こちらからすれば必要なタレントは所属する組織の中で中の上くらいのクラスで、我々のように前に出てくるタレントではないのではないか。さらに、そうしたタレントは、積極的に前に出てこないから撒き餌をいくら撒いて待っていても上手くいかないだろう。

そんなことを話す。

企業が誕生してから5年から10年くらいまで成長痛を伴いながら生き延びると、組織の構造が追いつかなくなる。生え抜きや中途採用で賄うことができればいいが、まずは事業に優先的に回すから、組織的に脆弱なままのことが多い。そこをそのタレント性を持った人材を充てるとそこそこ機能するだろうとみている。

ただ、コンピテンシ的に条件がある。組織文化を踏まえた上で、制度設計や業務運用を作れるスキルを求められる。他所から持ってきて、カルチャーを踏まえずにインストールするとコストを掛けただけで何も得られないだろう。

旧来の組織で、降ってくる仕事ばかりやっていたタレントにはこうしたことは難しいだろうと知人と意見が一致した。

50代のタレントには、0→1ではないし、1→100でもない。100→1000を目指すとき、カルチャーを育てながら制度設計をできるコンピテンシが必要なのである。

 

 

 

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方