付箋紙で溢れるホワイトボード
後輩「こんにちは、センパイ。どうせ今日もランチはぼっちなんでしょ。私がそんなセンパイをぼっちから助けてあげますよ」
先輩「ん、もうそんな時間か。って、なんだよ、久しぶりに顔を見せるなりぼっちとか」
後輩「だって、周りの人はみんなエレベーターに向かって行きましたよ。だからぼっち。ランチに声をかけてもらえないなんて可哀想じゃないですか」
先輩「キツイんだか、優しいんだか、相変わらずわからん」
後輩「どっちでもいいですから、ランチ行きますよ。お財布持ってくださいね。わたしの分もですよ」
先輩「はいはい。それで今日はどちらへ」
後輩「そーですねー、先輩は何食べたいです」
先輩「さっきまで仕事してたんだから、何も思い浮かばないよ。ほら、連れてってよ」
後輩「しょうがない先輩ですね。いいですよ、私のグルメアプリの『行ってみたい』フォルダを炸裂ですよ」
後輩「どうです、なかなかいいお店でしょ」
先輩「想像以、痛いって。ツッコミ早すぎ。それで今日はどんなご用向きで」
後輩「それなんですけど…今のプロジェクトチームのヘルプに入ったばかりなんですけど。聞いてます、先輩」
後輩「カンバン、ホワイトボードあるじゃないですか。いっぱいで溢れかえっているんですよ、付箋紙が」
先輩「こっちの握りも美味しいね、それで」
後輩「それはどうも。で、何したらいいですか」
先輩「何かするんだ」
後輩「するに決まっているじゃないですか」
先輩「どうしたいの」
後輩「付箋紙を減らしたいに決まっているじゃないですか」
先輩「困っていないならいいじゃん」
後輩「おかしいんですよ。だって、朝会やっても全然チケット減らないのにToDoだけ増えていくんですよ」
先輩「それじゃあ、減らないな。でも困っていないんだろう」
後輩「でも、正しくないじゃないですか。そんなの。誰が見たって。だからなんとかしたいんです」
先輩「まずさ、正しいか正しくないかは外から言うものじゃないよ。中の人たちがそれでいいならそれでいい。正しいを外から持ち込んでも拒否されるだけじゃないかな。ツイッターとかでよくやっているじゃん。わざわざ対立構造まで仕立てて文句を言っている人もいてさ。そんなことやりたいわけじゃないんだろう。で、そんな建前はいいからさ、何をしたいの」
後輩「終わらせたいんです。仕掛かり中の。全然終わらない。だから付箋が溜まる一方なんです」
先輩「もしかしてさ、1人の人がいくつも仕掛かり中だったりするでしょ。でさ、誰か、そうだな、できるエンジニアのリーダ格の人がこれやっておこうとかさ、忘れないようにとか言いながら付箋紙書いて何をするかわからないのにreadyに貼ってたりするでしょ。だったらもう答え出てるじゃん」
後輩「もったいぶらない」
先輩「ひどいな、ランチも奢らせるし、カンニングもさせろって」
後輩「可愛い後輩と一緒にランチ食べられるんだからそれでいいんです」
先輩「Doing、つまりWIPの列の幅を1枚しか貼れない幅にすればいいよ。それだけ」
後輩「それだけ…本当に」
先輩「運用、イメージできる」
後輩「多分…わかる」
先輩「じゃあ、1週間後に結果slackで教えて」
後輩「ランチ奢ってくれるならいつでもいいですよ」
先輩「じゃあいいや」
後輩「わかりました、来週また来ますからね。今度は先輩がお店を探しておいてくださいね」