トラブルな現場のチームを助けたい
『相談を聞いてもらっていいですよね』
30後半だろうか。初対面の彼は懇親会で立ち話をしている輪にいた自分に向かって話しかけてきた。いいも悪いもない。懇親会では様々な会話をする。多くは久しぶりに顔をみる旧知の知人と情報交換をすることが多い。
会合後の懇親会のため、会合で知り合った方が声をかけてくることもあるし、こちらからネットワーキングとして輪に首を突っ込むこともある。
ときどき、悩みを聞いて欲しいと話しかけてくる20代、30代くらいのエンジニアの方もおいでになる。どうレスポンスをするかはその相談事次第ではあるが、基本的には直接的な物言いはしない。示唆をするか参考になりそうなコンテンツを紹介することが多い。
だから、今回もお断りする理由はない。
『大規模アジャイルの開発を始めたんです』
直感的に、相当やばいのだな、と感じる。30年もエンジニア職をやっていれば身に付く感覚だろうか。それとも生き抜いてこれた本能だろうか。
大規模の単位はわからないが、システム開発は小さな1つのチームであっても難しい。システム開発自体が難しいのであり、そうしたチームが複数寄り集まる構造になるだけで難しさは指数関数的に難易度が上がる。
『自分のチームはいいのですが』
『外注で上手くいっていないチームがあって』
『そういうチームに原因と対策を求める上長がいて』
頭を過るのは、ウォーターフォールのシステム開発であっても、複数のチームのプロジェクトコントロールを期待する作業品質で進捗させることは難しいところで、まだ未経験の多いアジャイル開発の手法を複数のチームでやるなんて無茶を通り越していると思ってしまう。
大事なことなので繰り返すが、スコープが決まっていて(補足をすれば、スコープが決まっているからといって、仕様が決まっているわけではないことに注意すること。仕様は段階的な局面で詳細化具体化していくのでその意味ではスコープが決まっていたとしても仕様は決まっていないのが当たり前であることを知っていなければ潜りである)も、プロジェクト上のトラブルを抱えているケースが多い。
それを未経験者が多そうな(と察した)プロジェクトであればことさら不安しかない。
自分からは、参考になりそうなコンテンツ、立て直した事例のケーススタディの話をする。
多分、ケーススタディからでは何も得られないだろう。参考になりそうなコンテンツもそのコンテンツをみて、こちらから伝えようとしていた意図を汲み取ることは難しいかもしれない。
であっても彼はそのプロジェクトからは抜け出せないだろうから、属する間は上手くいっていない外注チームを横目で見ながら悩むのだろう。
正直、自分がそこに立て直しで放り込まれたら、どこから手をつけて良いかあぐねいてしまうかもしれない。
ただ、最初に始めるのは全員と会話をして情報を収集し、何が問題なのかを知ることから始めるだろう。