停滞する大企業と成長するスタートアップ

生産性の上がらない重厚長大でグローバルな大企業とWeb系クラウドサービス企業は、一見、真逆のような存在であるが不思議なことに共通項もある。

 

人事ローテ vs ゼネラリスト

大企業は、数年おきに人事ローテーションをかける。人事ローテーションを始めた頃には理由があったのだろうが、昭和、平成を経た今、人事ローテーションを始めたきっかけを機能しているか評価できている人事部は存在するのだろうか。情報システム部門も現場を知らないとと現場に数年出されることもある。場合によってはそのまま現場に置かれ、現場でのIT担当になることもある。組織は企業の意思決定のパターンであるから、現場でIT担当で置かれたとしても複数の役割を担わされ、複数の業務部門を兼務したりする。

一方、クラウドサービス、それもスタートアップに近い方は、圧倒的に人的リソースがない(=欲しくても採用できない)から、必然的にゼネラリストのような役回りをすることになる。法務がリスクから情報セキュリティを、SREが社内インフラやOA環境の整備を、総務が入館カードの発行と合わせてアカウントの管理も、のような感じでIT担当を置ける体力をつけるまでは、いる人でなんとか回す。役割的にフルスタックとなるが、技術よりは業務の観点でしかなく、広く浅くでありこれをゼネラリストと呼ぶのは少々気がひける。

会議 vs slack

大企業は会議で仕事がスケジュールされていく。担当役員の報告会議がサイクルのゴールで、担当部長への報告会議、担当課長の報告会議、(プロジェクト)チームの進捗会議と段階を経る。報告会議も場合により、事前会議やスケジュール調整ができない場合の事前、事後報告などの場を踏んでおかないとひっくり返されないので、根回し的な会議も差し込む。結果作業はその隙間に行われる。

一方、クラウドサービスのような企業は会議は少ないが負けず劣らず、slackのチャンネルが総数を誰も知らないくらい多い。イシューごとに作られるプライベートチャンネルも入れれば、あっという間に数100になる。大企業のようにスケジュールをブロックされれば会議としてのコミュニケーションチャンネルを介するので、なんの話をしているか明示的(会議の内容は別次元)だが、slackにポンと投げられても気づけないまま流れてしまう。

コンプラ vs オープンなカルチャ

大企業はコンプラは必達である。ちょっとしたメールの誤送信でも大ごとになる。大ごとになるかどうかは誤送信したと正直に報告した場合で、顔が広ければ上手く丸め込んで水面下でポイだ。組織の階層構造と業務機能の分離の行き過ぎは情報の分断を自然と行わせる。結果、need to knowを実現することになるが人事ローテ、同期入社、学閥などのインフォーマルなインハウスのソーシャルネットで情報はいつでもダダ漏れだ。これを組織間でやれば風通しもよくなるものを、組織間となるとコンプラを縦に(実は部長同士の出世争いや縄張り争い)、情報は分断される。

クラウドサービスな企業は、バリューを掲げているところが多い。そのうちの1つにオープンなカルチャという情報セキュリティやインサイダー的にはアナーキなカルチャをオープンと捉える。端的に言えば、情報セキュリティに対するリソースを掛けられないからであり、中途採用者が前職で情報セキュリティやコンプライアンスで刷り込まれた資産で運用されているのが実態だ。人的規模が100→1000のフェーズに入るとその辺りに関心を持つ社外取締役が口を出すようになり、結果、同じようなルートを歩み始める。

多層防御 vs ゼロトラスト

大企業ならではのコンプラである。法令遵守はもちろん、自社での規程を継ぎ接ぎしながら、歴代の担当者がハウルの動く城ごとく、規程にパッチを当てる。典型的なものは、情報セキュリティで、右へ倣えで箸の上げ下げまで事細かく規程や要領レベルで記述してしまう。結果、実装しないと規定違反となるから情報システムがそれを実装し、教育を行う。気づくと、効果を測れない多層防御という名の外部からの脅威に対向するセキュリティアプライアンスミルフィーユを積み上げる。しかし、ITを使う従業員の情報リテラシは低いから、すり抜けた添付ファイルを踏み抜き、ファイルサーバは暗号化されたり、BECに引っかかる。

クラウドサービスをやっている企業では、コンプラとスピードを量る。圧倒的にスピードを選択するが、ビジネスの根幹が情報管理の場合はセキュリテイとバランスをとる。極力クライドサービスで社内もSaaSも組むから、基本ネットがあれば業務は成立するためインターネットの接続点を集約する意味がない。必然とゼロトラストとして情報セキュリティが成り立たせる方向になる(ならないとおかしい)。PC=インターネット接続点になるということは利用者の情報リテラシが求められる。ビジネスを拡大すると次第に情報リテラシは低減し、大事故を起こしかねない。

 

 

 

 

端的に言えば、企業としてのスケールをアップしていくロードマップのどこにいるかだけで、随分先の方で時間軸に対して並行しているか、ゼロからのスタートで急激にX軸を駆け上っている最中かのフェーズだけの違いなのかもしれない。ただ、目の前に辿りたくない背中は見えているので規模の拡大と大企業病からの距離感をどう取っていくかがクラウドサービスのようなスタートアップの経営者の悩みかもしれない。

 

 

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